浅間隠山 鼻曲山縦走


気がつけば、先月は一度しか更新しなかった。
さすがにこれはまずい。
深く反省し、慌てて末夫さんの原稿を転記する。
今回は浅間山を望みつつ歩いた、昭和十三年四月の浅間隠山、鼻曲山縦走の記録だ。


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此のハイキングコースは展望の雄大広潤にして、美しい点では恐らく全関東にそう多くの比を見ないものと云っても過言ではない。
軽井沢で草津電鉄の一番に乗る様に、上野を出発するとよい。

草津行の軽便鉄道は軽井沢を出発して離山のすぐそばを通り、浅間山の雄大なる裾野を羊腸として登って行く。
途中、車窓の左手に美しき豪壮な巨人、浅間を充分に見る事が出来る。
畑もない人家もない、只一面の雑草と原生林の荒野を電車は走って、浅間の根越の最高所国境平を過ぎるとどんどん下って、すぐ二度上に着く。
浅間隠しへは此こで車を捨てるので有る。

道は初め、二度上の小さな部落を過ぎて烏淵へ到る道を取る。
小さな丘の様な所を越えて、駅より20分程来た所で左へ須賀尾峠から薬師温泉に到る道と別れて、右へと進む。
前方には雄大なる浅間隠が、萱戸の山頂を太陽の光に輝かせて素晴しい景色で有る。
道は初め、浅間隠の右手に有るコマガミ山の向って右裾を目差して登る。
登るにしたがって浅間の雄大な姿と、四阿山、白根山、六里ヶ原等を望み、何とも云へない気持だ。
やがて道は鼻曲から浅間隠へ連る尾根に取付くと、突然、碓井郡の山容が、丸で手に取る様だ。
赤城、榛名から、怪峨たる妙義、凸兀たる角落山、鼻曲山等、只、快哉を叫しめるばかりで有る。
道はこゝで尾根を下って行くから、此の道を捨てゝ化細い踏跡を辿って、尾根を行くので有る。
途中で道は失せるかも知れないが、、何しろ萱戸の尾根で見透しがきくから、前方の浅間隠しへ向って進めばよい。
暫くして道は浅間隠の凸起の直下に着く。
こゝで一寸休むがよい。
これからは全く道がないから、萱戸を別けて急坂を上へ上へとシャニムニ上ると、比較的簡単に1,700余米の浅間隠の山頂に達することが出来るで有ろう。

山頂は全くの萱戸で目を遮る何物も無いから、展望は実に素晴しい。
先づ正面に浅間が雄然と聳え、其の背後に籠ノ登、湯ノ丸等を望み、帰去来峠の鞍部から四阿山再び高く盛り上り、白根の噴煙有り、岩菅から上越国境の連峰、雲表に聳ゆ。
更に目を転ずれば、武尊山から日光火山群、赤城、榛名有り。
其の右に関東大平野を望み、赤久縄の連峰から怪峯妙義有り。
近く鼻曲、角落、剣ノ峯等。
やゝ低く奥秩父、八ヶ岳、南アルプスをも模糊たる中に望む、息をもつかせぬ展望だ。
充分に楽しむがよい。

下山路は、元来た道を下るのも馬鹿らしいから、浅間隠から前方の鷹繋山へ連る尾根の左手の沢へ向って下るがよい。
道はなく非常に急な下りだが、決して危険はない。
どんどん下って行くと、やがて小さな沢に出るから、この沢沿ひに更に下ると、暫くして大きな水の無い薙も次第に小さくなって、やがて薬師温泉よりの道に出るから、此れを左へ進んで広い草原をつき切ると、やがて前記の烏淵への分岐点に着く。
浅間隠よりの下山は此の外に鷹繋の尾根を下ってもよく、栗平峠へ出ても良いが、此れも一寸遠道で有る。小瀬温泉に到るには、再び二度上から電車で長日向に下車、歩いて10分程で達せられる。
透明なアルカリ泉で、加熱して用ふ。
皮膚病、痔、胃腸病に効くと云ふ。
旅舎の前は清い湯川の支流が流れ、周囲は鬱蒼たる森林で囲まれた静寂境で有る。

翌日は早朝出発するとよい。
再び長日向の駅に到り、更に線路に沿って1粁程国境平方面に進んで右へと入ればよい。
完全なる指導標と道が有るから迷ふ心配はない。
道は可成りの急坂で有る。
又、唐松の森林帯で、前日の様な明朗な展望はない。
途中、二三の岐路は有るが、何でも上へ上へと登る道を進めば良い。
暫くして防火線の前に出る。
此の防火線は一直線に鼻曲の頂上へ通じているが、長い間手を入れないため、雑木や雑草が密生して一寸歩きにくいから、此こで此の防火線に沿ってヂグザグな急坂を上ると、すぐ先刻の古い防火線と合する。
こゝで新しい防火線と別れて、古い防火線を一直線に上るので有る。
歩きにくいが、迷ふ心配はない。

鼻曲山は海抜1,600余米。
山頂は大天狗小天狗の二峯よりなり、山頂よりの眺望は、浅間隠の雄大な姿を望む外、前日の展望と全く仝一で有るから略す。
霧積へ到るには一ノ字山への尾根へ向って、鼻曲の凸起を急下降して下り切った所から国境尾根と別れて再び急下降し、剣の峯へ到る尾根へ取付き、その尾根沿ひに進めばよい。
途中より鼻曲、浅間隠の偉容がものすごい。
道は剣の峯の手前で此の尾根を右へ下る。
可成り長い事下ると横川より霧積へ通ずる道に出るから、こゝで右へ行くとすぐ霧積温泉の旅舎を発見するで有ろう。
湯は微温のアルカリ泉で、其の儘浴用に供している。
皮膚病、胃腸病、痔に効くと云ふ。
こゝで一時間程休んで、湯にでも入って出掛けるとよい。
横川へは約3時間半、霧積川に沿って下り、途中には金洞ノ滝、天狗岩等の名勝が有り、坂本町よりの妙義が美しい。

(付記)
浅間隠山は全く道がないから、夏期は雑草密生して見透しがきかない時は、登山は一寸無理だ。
残雪の頃から晩春の頃が最もよく、霧の深い日も勿論不能で有る。



今回は昭和十三年の登山記録だったが、浅間に関しては昭和七年の記事を一度載せている。(参照
しかし、十三年以前の浅間山登山の原稿が隠れているのを発見した。
昭和十一年六月に、二回連続で登っていることが分かった。
次回は、その二つを順次アップする予定です。(太田)


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