玉川林道をへて八幡平へ


 「秋田駒ケ岳と田沢湖」からの続き。


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 八幡平をめざし、翌日、朝早く宿を発つ。玉川に出て川沿いに上流へと歩く。もの凄い原始林のなかだが、道は森林鉄道の工事中で、線路に沿って歩けば迷うこともなかった。しかし、前の日の強行軍で、とても鹿ノ湯(玉川温泉)までは無理で、最奥の部落玉川へ行き、そこの一軒家に頼んで泊めてもらう。家の人々はきわめて素朴で親切だった。
< 草思社発行 長谷川末夫著 「汽車が好き、山は友だち」より抜粋 >


 これが昭和12年7月の回想である。
 一方、下に記すのが、帰宅後にしたためた記録だ。
 誤字と思われる部分もあるが、原文に忠実に採録する。
 蛇足になるが、文中の鹿湯とは、現在の玉川温泉を指す。


田沢湖方面より八幡平へ到るには、玉川林道より鹿湯をへて蒸ノ湯に到り、それより登るので有る。
此れから此のコースに就いて説明して見よう。

田沢湖畔に静かな一夜を明したならば、翌日は朝八時頃の出発でよい。
湖畔の道を御座石の方へ向って2粁程来た所から右へ小路を辿り、田沢湖を廻る低い外輪山を越して玉川を渡ると、すぐ下田沢の部落に着く。
こゝから玉川に沿って行くので、此の道が玉川林道で有る。
林道は川の右手を進むが、川の左手に生保内より玉川部落をへて岩ノ目に通じる。
森林鉄道の未だ線路の敷設してない道が出来ているから、此れを行った方がよい。
此の道は途中にトンネルは有るが、上り下りが全くなく、且つ玉川のすぐそばを通るので、玉川渓谷の美しさを余す事なく見る事が出来る。
そして少しも旅する身に飽が来ない。
しかし森林をへて行くと、上り下りが劇しくて体が疲勞するばかりで、実に莫大な損失で有ろう。
林道も小沢部落を過ぎると、川を渡って鉄道の道と一所になり、玉川最奥の玉川部落に着く。
此れから先には人家なく、鹿湯迄は一日では到底行かれないから、こゝで泊るがよい。
もっとも玉川部落より更に奥に鳩ノ湯と云ふ温泉が有るが、こゝは余り交通が不便なため今では廃滅してしまって、昔時の家屋は有るが営業はしていない。
然し温泉は実に豊富で、それに土地の老人などが何日も二、三人ぐらい寝具や食料を持参して泊っているから、其れ等の人に米や味噌でも分けてもらって泊る覺悟なら此處に泊る事も出来るだろう。
(然し温泉の状況を、一応玉川部落の人に尋ねて見るがよい)
然し温は川の對岸だから、川を渡渉しなければならない。
玉川部落にも旅館はないから、学校の先生で有る中島民五郎氏の家に泊めてもらうがよい。
生保内より岩ノ目に通じる森林鉄道は、将来鳩ノ湯迄行くそうで有る。
この鉄道が出来れば、鳩ノ湯も再び元の華かさに戻るだろう。
又、この鉄道を利用すれば、玉川部落は愚鳩ノ湯迄僅々二、三時間で達し、田沢湖畔より鹿湯迄はゆっくり一日の行程となり得るで有ろう。



 読みにくいのは承知の上で、この旅の手書きの全記録を載せる。


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 次回もまた、この生原稿を文字に起こして綴ってみよう。
 「鳩ノ湯まで」に続く。(太田)


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